「はぁっ・・・はぁ・・・」
相手の身体に刺さっていた剣を抜くと、傷口から血が噴き出た
そして、相手は倒れた
忍の仕事
「よき働きであった!
」
「・・・勿体なきお言葉」
戦が終わってからの上司と部下の普通の会話
私は、目の前にいる真田幸村様にお仕えしている『真田忍隊』の一人
つまり忍者
「もう部屋で休んでよいぞ!」
「はっ」
ある程度会話して、部屋で休んでいいという言葉が出る
そして私は部屋に戻る
時たま、私は農民達が羨ましいと思うことがある
朝早くから起きて各々の仕事をする農民達
別に、今の生活に不満があるわけじゃない
むしろ満足過ぎるくらいだ
それでも、農民達は私にないものを持ってる
穢れのない、美しいもの
純粋な心と、田植え仕事をしてきた泥まみれで荒れた手
私はそれが羨ましい
忍は、真っ黒な仕事
血で、穢れている
私の手は、血で汚れてる
「どうしたー
?なんか元気ないけど、どうしたの」
「佐助・・・」
「あのねー一応俺様さ『隊長』なわけであって、
の上司なんだけど。上司に向かって呼び捨てってどうかと思うんだけどー」
「私に『隊長』って呼ばれてどうよ?変な感じしかしないじゃない。幼馴染なんだからいいでしょ?」
「あはは・・・確かにそうだな」
部屋の外の縁側から庭を眺めていたら、忍隊隊長・・・猿飛佐助が来た
コイツとは幼馴染で、昔からよく知っていた
そのせいか、私がちょっと元気をなくすとすぐにこんな風に話しかけてくる
私はそれに甘えてるんだ
こんなんだから、佐助ともこんなに差がついたんだ
昔は私の方が忍術だって得意だった
でも、いつの間にか抜かれてて
佐助は隊長、私はその部下になっていた
「で、何かあったわけ?そんな顔して」
「ちょっと・・・考え事してたの」
「またぁ?何考えてんのいつも・・・そろそろ言ってくれてもいーんじゃない?」
「えー・・・」
「えー・・・って・・・幼馴染の相談くらい乗ってやるって。俺様そんなに信用ない?」
「そんなわけじゃ・・・」
「じゃー教えてっ」
多分これ以上嫌がっても無駄・・・か
言いたくないわけじゃないけど、忍として、言っちゃいけない気がするだけ
「じゃあ、今だけ。・・・忍者としてじゃなくて聞いてくれる?」
「普通の女の子として聞いてくれってこと?」
「まー・・・そうかな」
佐助は、部屋の柱にもたれかかったまんまだ
「農民は、なんて美しいんだろう・・・って、思うことがあるの。血で穢れた戦場を知らない、純粋な農民達」
「・・・・・・・」
「忍者が嫌ってことじゃないんだけど・・・城下町を歩いたりしてると、私は違うんだ。穢れてるんだって思っちゃうの」
「ま、それが仕事だからね」
「穢れを知らない。だからこそ、知られたくない。血に染まる戦場を・・・もう、農民達を戦に巻き込みたくないの」
「戦に犠牲は付き物だ。どんなに頑張ったってそれは変わらない」
「犠牲を少なくするたけには、私たちがもっと頑張らなきゃいけない。この手を更に汚そうとも、あの人たちの手を、血に染めてはいけない」
そうだ
もう汚れてしまった私達の分も、農民たちに生きてもらわなきゃ意味がない
そのためには、私たちがもっと汚れなければいけない
農民達が綺麗なままなのなら、私はそれでいい
「そんなこと考えてただけ。ちょっと疲れたから休むねー」
「
は穢れてなんかいないさ」
「・・・え?」
「
のその血に染まった手、俺様は綺麗だと思うぜ?」
急に何言い出すのコイツ・・・
綺麗?私の手が?
「何言ってるの?なんでこんな手が綺麗なのさ」
「汚れてる分働き者ってことだし?働き者の綺麗な手ってやつさ」
「けど私は・・・」
「もー暗い方へ考えないの!明るく行こうぜ?」
「う・・・くそっ・・・」
悔しいけど佐助の言うとおり、明るい方へ考えなきゃな
血で汚れてるってことは、その分働き者・・・
この考え、結構いいかもね
「佐助」
「んー?」
「なんか元気出たよ。・・・ありがとう」
「何だよ今更。水臭いなー」
「確かに!まぁ私はちょっと休むよ。じゃ」
「ゆっくり休めよー」
佐助と別れて部屋に入り、私はゆっくり眠りについた
あとがき
夢主は子供のころから忍者としての修行を受けてきたんだけど
それでもやっぱり思うことがあるんだよ女の子だから
早朝に起きて畑仕事してナンチャラカンチャラして〜っていうほのぼのした生活が好きなんだよ
人間ってやっぱり無いものねだりするからさ、ウダウダなってる感じ
自分にできることで、少しでもそのことに関連してるならもうウダウダしないって決心するんだよ
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