「それにしてもプリンプリンの家族が揃いも揃ってあんなに美形だったなんてね・・・」
「アイツの家族ならありえそうだけどな・・・ま、真面目に考えない方がいいよな・・・」
オレの後ろでテトとウスターが苦笑いしながら話してた
確かに、オレもちょっとびっくりしたけど・・・
・・・兄弟かぁ
それぞれの気持ち
「いいなぁ・・・兄弟」
「なんだ?らしくねーじゃねーかコロッケ。どうした?」
ウスターがにこやかにオレの隣に来て話しかけてきた
「そういえば、お前って兄弟とかいねーの?」
「え?オレに〜?」
質問がいきなりなんじゃないかなぁ・・・
それともそういうもの・・・なのかなぁ・・・
「んー・・・いないことはないよ?」
「えぇっ!?マジで!!?」
「コロッケに兄弟いたのかよ・・・今まで聞いたことなかったから意外だな〜」
みんな驚き過ぎだよ・・・
そんなにオレに兄弟いたことが意外なのかな?
「ねぇコロッケ!いるのはお兄さんとかお姉さん?それとも・・・弟とか妹だったりして!?」
「姉ちゃんだよ!・・・でも、もういないんだ」
「「「・・・え?」」」
「父さんがオレを守って死んじゃった時、黒マントの男につれてかれちゃったんだ」
「・・・・・」
「なんか・・・嫌な事思い出させちまったみたいで・・・悪ぃ・・・」
「あ、謝らないでよ!そうだ!俺の姉ちゃんの話聞いてよ!」
「え・・・いいの?」
「もっちろん!」
「・・・じゃあ聞かせてもらおうかな!」
「うん!」
オレ達は近くの木陰に座って話すことにした
・・・実は姉ちゃんのことを誰かに話すのって初めてなんだよね・・・
「最初に言っとくけど、姉ちゃんとオレって、本当の姉弟じゃないんだよね〜」
「そうなのか!?・・・じゃあ、お前とフォンドヴォーみたいな関係なのか?」
「うん!そんな感じだね!あとは――――」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「よし、今日の修行は終わりだ!」
「「ありがとうございました、バーグ師匠!」」
・・・今日も大変だったな・・・
明日もあるし・・・早めに休もう
毎日のようにそんなことを考えてる時、バーグ師匠が声をかけてきた
「よう、。最近お前もやっと修行に追いついてこれるくらいになったか?」
「そうですね・・・」
「お前自分で『修行させてください』なんて言っておいて全っ然だったからなぁ。ま、強くなってるって証拠だよ」
「はぁ・・・ありがとうございます・・・」
「・・・その無機質というか無感情というか・・・もっとこう、女の子らしく朗らかに微笑むとか・・・ねえの?」
「すみません・・・」
「いや、謝ることじゃねぇけどよ・・・」
「師ー匠ー、何を口説いてんですか〜?」
バーグ師匠の後ろから、フォンドヴォーさんがひょっこり出てきた
なぜだか少し口元がニヤついているような・・・?
「別に口説いてねぇよ・・・」
「本当ですか〜?、こんな大人に着いてっちゃダメだぞ?」
「え?は、はぁ・・・」
「お前らなぁ、何言ってんだよっ」
表面では、こうやって師匠をおちょくってるフォンドヴォーさんも、心の底では尊敬しているのを皆知っている
皆、といっても私とバーグ師匠しかいないけど・・・
バーグ師匠が背負っている子供・・・コロッケも、可愛らしくきゃっきゃと言っている
私は、こんな光景が内心好きだったりする
家族を事故で失い、生きる術も失い、途方に暮れていた私を、救ってくれたのがバーグ師匠だ
最初は、このコロッケのお守として一緒に生きてきたけど、多少は強くないと守るものも守れない
そう思って、バーグ師匠とフォンドヴォーさんの修行に無理を言って参加させてもらった
そのお蔭で、私もあちこちにいる盗賊バンカー達とは一人で戦えるくらいには強くなった
全て、バーグ師匠とフォンドヴォーさんのお陰だ
この二人には、感謝してもしきれない
「それでは・・・私は水浴びしてきます」
「ん?あぁ、行って来い」
「変な奴に襲われんなよ?とくにこの師匠みたいな・・・」
「んなことしねぇよ!お前はさっさと飯の用意でもしてろ!」
「はいはいっと・・・」
背後で交わされる会話を聞きながら、私は近くの湖へ向かった
軽く水浴びをして、体の汗を流すと、私は師匠たちのところへ戻った
戻る頃には、食事の用意がされていた
食事の用意はほとんどフォンドヴォーさんの役割だった
・・・なぜか私にその役割は回って来ない
疑問に思ったことは何度もあるけれど、心当たりならある
前に一度、感謝の気持ちとして料理を作ったことがあったけど・・・その日からフライパンにも触らせてもらえなくなった
「おっ戻ったか」
「おう、おかえりさん」
「はい・・・ありがとうございます」
丁度いい大きさの岩が、腰掛代わりに三つ並んで置かれていた
その中央には、フォンドヴォーさんが作った料理が並べられている
一応旅をしているわけであって、食材もあまり良い物とは言えない物ばかりだけど
フォンドヴォーさんが腕を揮えばこんなにも美味しそうになる
作る人のセンスも出ているんだろうな・・・
「よし、じゃあも帰ってきたし、食うか!」
「ですね、それじゃ・・・」
「「いっただっきまーす」」
「いただきます・・・」
料理を口に運ぶと、いつもながらにとても美味しかった
毎日食べているけれど、フォンドヴォーさんの料理だけは毎日同じものを食べても飽きないと思う
目の前で食べ物を取り合っているバーグ師匠とフォンドヴォーさん
それを見て、嬉しそうに、楽しそうに笑うコロッケ
こんな日が、いつまでも続けばいいと、心のどこかで思っていた
数年経ったある日の夜
フォンドヴォーさんは、既に修行を終えて旅立ってしまった
「おーいコロッケ!!今日の修行はそのくらいにして、飯にしねーかー?」
私は、コロッケのお守役として拾われたので未だ一緒に旅、兼修行について行っている
フォンドヴォーさんがいなくなってからの食事は、言ってはいけないけど一気に質素になった
「この食事も、フォンドヴォーさんがいればもっと・・・」
「お前がもっと料理の腕が上達すりゃあいいんだよ」
「・・・フランパンも触らせてくれないのに料理の上達・・・ですか?」
「つまり無理だってことだよ」
・・・あまりにも直球すぎて食べていた焼き魚が喉に詰まるところだった
「・・・こんなことならフォンドヴォーさんに少しでも習っておくべきでしたね」
「別に死にゃあしねーし、いいんじゃねーか?」
「男性のフォンドヴォーさんに料理ができて、女の私にできないなんて・・・ちょっと世間的にアレじゃないですか・・・」
「お前はいつもアイツのことばっかりだなー・・・」
バーグ師匠がつまらなさそうに、焼き魚を食べながら言った
・・・ぶっきらぼうにって言う方が正しいのかな・・・
「アイツ・・・フォンドヴォーさんのことですか?」
「それ以外に誰がいるんだ?」
「・・・そんなに言ってますか?私・・・」
「言ってる。口を開けばフォンドヴォーさんが〜とか、フォンドヴォーさんって〜ってばっかりじゃねーか。わざとか?」
「別にわざとじゃ・・・」
「じゃあ無意識で言ってるのか?」
ずいっと身を乗り出して顔を近づけてくる師匠に、少しうんざりしながら答えた
「そうじゃないですか・・・?気付けば口にしてるみたいですし・・・それぐらい尊敬してるってことですよ」
「そいつの師匠のオレの名前をあまり聞かないんだが?」
はぁぁ・・・
と深いため息を私はこぼした
なんというか・・・もう・・・
疲れる・・・
私が項垂れていると、それをよそに当の本人は自分の息子と話している
はぁぁぁ・・・
本日二回目の、深いため息
その時
後ろの茂みから、何かの気配がした
本当に微かにだが、ガサ・・・という音も聞こえた
バーグ師匠も当然気付いたようで、一気に表情が強張った
「コロッケ!父さんがいいって言うまで、そこを出るんじゃないぞ!!コロッケの事見てろよ!」
「はい、師匠」
「え、なに、どーちたの?」
私はバーグ師匠の合図とほぼ同時に、コロッケを木の穴に隠した
さすがに、二人入れるほど穴は大きくなく、私はコロッケのいる木が見えるぐらいのところにある岩陰に隠れた
それから三日三晩、バーグ師匠と謎の男との戦いが始まった
そして、四日目の朝
「―――・・・ゃん、どこ?」
「ね・・・・・・人はもう、・・やっつけちゃったの?」
私はまだ、その時意識はなかった
寝入ってしまっていたみたいで、コロッケが気の穴から這い出ていることに気付かなかった
「うー・・・ん・・・」
「お父しゃーーーーーーん!」
その叫び声に、ハッと覚醒する
急いでコロッケの方を向くと、木の穴から出てきてしまっていた
「コロッ・・・!!」
「バカ!出てくるんじゃない、コロッケーーー!」
「いいもん見ーーーーーっけ!」
「やめろおおおお!!」
私は全力でコロッケのもとへと駆けた
このままじゃ、コロッケがやられる
足がもつれて、思う様に走れない
それでも、私に、家族を思い出させてくれた人たちを、絶対に傷つけたりなんかさせない
「キェヘヘヘヘ!!」
不気味な笑い声と共に、謎の、黒いマントを羽織った男が、光る剣のようなものを投げてきた
狙いは―――――コロッケ
この人たちを守れるなら、死んだっていい
その思い一心で、私はコロッケを庇うように敵の正面を向いて両腕を広げた
これで、コロッケは助かる
そう思っていた
けど、次の瞬間、一瞬視界が暗くなった
痛みはない
・・・死んでない・・・?
両肩に回された太い二本のなにか
顔の横でチラつく紫の髪
そして鼻をかすめる、師匠の匂い
――――まさか
「お父しゃん!!」
「え・・・・・・し、しょう・・・?」
ピシャァアアンと、雷が鳴った
嘘、嘘、嘘
これは、悪い夢だ
早く覚めて
でも、それじゃあ、この肩の温もりも?
頬をくすぐる髪も?この、匂いも?
違う、これは夢なんかじゃない
現実
「うひょーーーーすげーーーー大漁じゃーーーーん」
チャリーン、チャリーンと、禁貨を貯金箱に入れる音がする
「へへ・・・・・・禁貨は全部いただいたぜ!」
そういうと、黒マントの男は立ち去ろうとする
このまま行かせたら、死んでも死にきれない
「んー?何ー?ボクと闘ろうって?」
「・・・・・・」
師匠の亡骸を横に寝かせて、私は無言で黒マントの男の前に立ちはだかる
コロッケが、心配そうに怯えた目をこちらに向けているのが分かる
「・・・コロッケ、大丈夫だからね」
「おねーしゃん・・・」
コロッケの方を向いて少し微笑むと、私は敵に向き直った
「きっと、私はお前に勝てない・・・私の事は殺しても構わない。だけど、この子には手を出さないと約束して」
分かってる。これは、ただの屁理屈だ
自分で死にに行くようなもの。自殺行為
だけど、せめて、一撃食らわせたい
私の命の恩人の、師匠の、仇を
「死にたいの〜?なら、殺してあげるよ〜その男みたいにね〜」
「・・・っ!」
私は男に向かって駆け出した
相手は、師匠を殺した剣を持っていた
「ハン・・・」
師匠に教えてもらった技
威力なんてまだまだだけど、これの他に、アイツに効く技を持ち合わせていない
「バー・・・」
「なーんちゃってね!」
「・・・えっ!?」
謎の発言と共に、私は炎を出していた腕をぐんっと引っ張られた
気付けば、男の胸の中にいた
抱き締められていた
「なっ・・・!?は、離し・・・」
男は腕の力を緩めず、出会った時から変わらない不気味な笑みを浮かべていた
感情のない、無機質な笑み
師匠たちが言っていたのは、こういう表情だったからかな・・・
ふと、そんなことを思う
「なんで・・・殺さない・・・!?」
「じゃあ、なんでボクがわざわざ望みを叶えてあげなきゃいけないの〜?」
なるほど。そういう理屈か
生きたいと望む者には死を、死にたいと望む者には生を
どこまで非道なんだ
「・・・じゃあ、私をどうする気・・・?」
「そうだねーどうしよっかなぁ〜」
変わらない笑み
そのお蔭で、何を考えているか見当もつかない
「このまま野放しにしておいたら、またいつか襲いに来るよね〜・・・まぁやられないけどー」
随分と余裕な感じだった
それが、現実だからだ
「そうだな〜・・・あ、いいこと考えた!ボクの下僕となって禁貨集めの手伝いでもしてもらおうかな〜」
「何っ・・・!!?」
どうして仇の男と一緒に旅をして、そいつのために禁貨を集めないといけない
そのセリフが喉まで出かかったけど、私に拒否権はない
私にもっと力があれば、対抗することは少なからず出来ただろうに
・・・悔しい
「決ーまり!じゃあ行こっかー!」
「あっ・・・コロッケ・・・!!」
幼いながらに状況を大体把握したのか、コロッケの目が焦りに変わっていた
「おねーしゃん!」
「コロッケ・・・っ!!」
「悪く思うなよ、小僧ーーーー」
「コロッケーーーー!!」
私を肩に抱え直して、木の枝を飛び渡った
コロッケが私を呼ぶ声がする
なんていうことだ
敵に一撃もできない上に攫われるなんて
師匠たちに顔向けできない
「師匠・・・フォンドヴォーさん・・・コロッケ・・・」
私は、大好きな人の名前を呟いた
助けを乞うように
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「そんなことが・・・」
「おじいちゃんの水晶で少し見たけど・・・やっぱり・・・かわいそうだよ・・・」
「でも、姉ちゃんは生きてる!だって黒マントの男は、姉ちゃんを殺さずにつれて行っただけだもんね!」
「・・・!そうよね・・・!そうに決まってるわ!」
皆の暗かった表情が、少しずつ明るくなっていった
でも、プリンプリンの一言で、また皆暗い表情になった
「ん・・・?でもよ、バンカーサバイバルの時、アイツ一人だけで他に誰も連れてなかったことないか・・・?」
「そういえば・・・」
オレも、今になって気が付いた
いつも思っていたことなのに・・・
「じゃ、じゃあ、さんは・・・?」
その場が静かになる
まさか、もしかして、そんな・・・
「だ、大丈夫だよ!オレ、また禁貨貯めてバン王に姉ちゃんのことも頼むから!」
「バーグさんの事やフォンドヴォーの事だってあるだろーが・・・」
「あと三回貯めればいいだけじゃん!」
すぐ集めてみせるよ!と言ってぴょんぴょんはねる
大丈夫、すぐ集めてみせるから・・・!
「・・・じゃ、コロッケの願いのためにサポートしてやるよ!」
「わたしも!」
「わしも出来る限りのことはしよう!」
「え・・・えっ?皆なんで・・・?」
皆それぞれの願いがあるのに・・・どうしてそんなことするんだよ・・・
「な、なんだよ〜皆も自分の願いがあるんだろ!?なんでオレなんかの願いのために・・・」
「そんな話聞かされて、はいそうですか。で終われるわけねーだろ?なっプリンプリン!」
「え゛っそ、そうだな!いや〜オレ様も人がいいな〜ったくよ〜」
そのやりとりを見てテトがクスクスと笑ってた
いつもの感じに戻ってきた
「ありがとう皆・・・!オレ、頑張るよ!」
もうちょっと待ってて、父さん、フォンドヴォー、姉ちゃん・・・
オレ、絶対に三人を生き返らせてあげるからね!
コロッケがまだ幼少の頃がメインのお話
夢主は不幸にも事故で家族を亡くしてしまう
そんな時バーグさん達と出会って、コロッケのお守兼修行のために一緒に旅をすることに
最初はあんまり打ち解けてなかったけど
年を重ねるにつれてだんだん心を開いていく夢主
だけど突然あの事件が起き、仇を討てないまま攫われてしまう
バンカーサバイバルの時は行方不明とかで、とりあえず死んでない設定
なんかフォンドヴォーみたいになっちゃったね