「『男を紹介して欲しい』?」

「……って、が」





喫茶店でジュースを飲んでいたポーが素っ頓狂な声をあげて、私と、私と一緒にきたテトを交互に見つめた

そ、そんなに意外だったかな




…実を言うとポーにはあんまり相談したくなかったんだよね…

なんていうか……周りに話が広がっていきそうで……




明日にはもう皆知ってたとかそんなオチ洒落にならないよ……

じゃあどうしてポーに相談することになったのか




それは数分前まで遡る









―…






『はぁ〜〜……』

『何やってるの?





『テトはいいよね〜……可愛いしスタイル良いし優しいし……モテモテじゃん……』

『きゅ、急にどうしたのよ?』





『彼氏とかさ……欲しい年頃じゃん……?』

『彼氏欲しいの?』





『単刀直入に言えばそうかなぁ……ねぇテト、誰か紹介してよ!』

『え、えぇ?わ、私?』





『良い人たっくさん知ってるでしょー?ねぇねぇ一人くらい紹介してよ〜〜』

『で、でも私……う〜ん困ったわ……そうだ』




『えっ?何々?誰かいい人思いついたの?』

『ううん、違うけど……こういったこと、私より詳しい人がいるからその人に聞いたらいいんじゃない?』




『えっホント?んー…じゃあその人に聞いてみようかな、テトのお墨付きだし』

『決定ね!じゃあちょっと待って、今連絡してみるから……』





『テトって本当に優しいよね〜モテるわけだわ』

『……うん……うん………そうなの。それで、今から会えない?……ほんと?分かった!じゃあ、いつもの喫茶店でね!…うん、またあとでねー』





『その人、なんて!?』

『会えるって。町にある喫茶店で待ち合わせしてるから、行きましょ!』





『ありがとテトー!!』







―…





そして来たのがこの喫茶店

まさかテトのお墨付きの人がポーだったなんて……




ま、まあ確かに仕事関係とかで知り合いとか多そうだけど……





「ふーん、が男作りねぇ…まぁいいけど……」

「ほ、ほんと!?」




多少の心配はあるけどとりあえず紹介してくれるそうで……

良い人だといいなぁ





「で、王子様と何があったのよ」

「うんうん私の王子様、早く会いた……え?」




ポーの方を見ると、なんとも悪そうな顔をしてニコニコと微笑んでいた

私の隣に座ってたはずのテトまで向かい側に座ってるし……





「とぼけたってダメよ〜?アンタが男関係の話するなんて、王子様と何かあったからとしか考えられないんだから!」

「私もその話聞きたかったのよね!おねーちゃんならこう言う事ドンドン聞いちゃうから、それ聞くのが楽しくて……」




は、ハメられた!!

ま、まさかこんな事態になろうとは……




「い、いや、べ、別に何も……っていうか、お、王子様って誰の事、」

「言わせないでよ!幼馴染みのリゾットよ!」




「いや、いやいや、な、何にもないって、別に、ほ、ほんと」

「ん〜?そのどもり方は怪しいわねぇ……?」




いつまでも食い下がるポー、それを隣で楽しそうに聞いているテト

こ、この姉妹恐ろしい……




いやいやでも、あんなこと言えるわけ……





「あんな事ってどんな事よ?」




……町のジュエリー屋さんにリゾットが入っていくのを見て、あまりにも意外だったからこっそりウィンドウから覗いたら……

店員さんっぽい綺麗な女の人と話してて、時々顔赤くして……やっぱりあれって照れて赤くなったんだよね……




「へぇー…なかなかやるわね」





前に「彼氏欲しい」ってぼやいてたら『お前に男なんてできるのか…?』なんていうまぁ失礼な事を言われたわけでしてね

きっと無意識で言ったんだと思うよ、ちょっと天然入ってるっぽい感が昔からしてたし?




「確かに、ちょっと天然入ってる……ような……?」

「で、それからそれから!?」





その他に遠まわしに『お前に男を作る必要なんてない』的な事を言われたわけでして

人に男作るなって言っといて自分はこれかっと思って現在に至るわけですよ





「なるほどねぇ〜」

「リゾットもスミにおけないわね」





……あれ?





「……え?何……え、もしかして……心の中読んだ?」

「普通に声に出てたわよ」





「ふふふ、良い事聞いちゃった」

「え!?う、嘘嘘!!?い、いま聞いたこと全部聞かなかったことにっ…!!」




もなかなか可愛いところあるじゃなーい」

「そ、そんなことより紹介……あ、そうそう!前言ってた、えーっと…ファ…じゃなくてフェ?んー違う…えー……あ!フォンドヴォーさん!あの人!話聞く限 りじゃ凄い素敵な人じゃない!?」




「ん〜そうねぇ〜このまま紹介しても面白そうだけど……恨まれるかもしれないしー」

「どうするの?おねーちゃん」





私は頼んでおいたアイスティーを飲みながら二人の様子を見守った

っていうか、恨まれるって……誰に……





「んー、とりあえず今は様子見ってことにしましょ!」

「えぇーそんな…」





「もしかしたらリゾットも何か訳ありかもしれないし?」

「わ、訳ありって一体どんな…」





「よし!じゃあ今日のところはとりあえず解散ね!一週間経って何か分からなかったらもう一度集まるわよ!」

「じゃあその時はまた連絡してね〜」




「ちょ、ちょっと本当に…?」





打ちひしがれる私を放置して二人はさっさとお会計しにレジへ向かった

大体何か分からなかったらとか、訳ありって何……





そのまま別れてしまったので、今日は私も帰ることにした










「もうちょっと真面目に相談乗ってくれても……なぜか二人とも楽しそうだったし……」



友達が悩んでるんだからさ……

ちょっとよく分からない事言ったりしてたし……




「リゾットが彼女欲しいのかは知らないけど、私は彼氏が欲しいんだよー……」




………………

……………………それにしても、あの店員さん綺麗だったなー……





やっぱりリゾットもああいう美人さんが好きなのかなー……

大人っぽい雰囲気で夜のバーとか行ってそうな……




私とまるで正反対の人

スタイルも良くない、子供っぽいし……




そこまで考えて自分で傷付いた

やめようこんな事……




ソファにもたれて目を閉じ、愛しい幼馴染みの顔を思い出す

あ、いや、愛しいってほどでも……でもやっぱり……




「……好きだなー……」




昔から一緒にいたリゾット

身分とか全然違うけど、よくお城に遊びに行って仲良くなった




いつの間にか好きになってた

でも告白なんて考えたことない




したら成功しても失敗しても今までと同じ生活は送れない

いや、成功すれば問題はない……けど、今の生活で十分




リゾットとは今のままの関係が私に一番合ってる

恋人でも単なる知り合いでもない『幼馴染み』でいよう




少し胸がスッとした感じになった

今日はもう寝ることにした
























































六日後、私は町をぶらぶらしていた

約束の一週間まであと一日





結局あの日から今日までリゾットに関して何の情報も得ることはできなかった

今日もきっとそう




何も起こることなく終わっていく

そして明日ポーとテトと遭って素敵な人紹介してもらって……





「……何気持ち悪い顔してるんだ……?」





気が付くと目の前に見慣れた顔と銀髪が

赤い瞳をしてその人物はまさに幼馴染みの姿そのもの





いや、本人だ






「……そ、そんなに気持ち悪い顔してた?」

「一人でニヤニヤしてかなり怪しい奴だぞ……」





う……うわぁ……そう言われたら私ちょっと危ない人みたいなさ……

これから外出する時はマスクしよ……





「まぁ丁度いい……お前を探してた」

「え?」





探してた?私を?なんで?

心当たりが全くない私は頭上に?を沢山浮かべた





「これ、やるよ」

「え、え?」




そう言って私の手に握らせたのは小さなラッピングされたもの

紙を開いてみると、白い箱に細かな装飾がされた清楚な感じの小物入れがあった





「……箱?」

「バカ、中身も見ろ」




パカリ、と蓋を開けてみると………





「イヤリング……!」




その中には小さな宝石が埋め込まれ、小さな羽がチェーンでぶらさがっているイヤリングが入っていた

宝石は光の角度によってさまざまな色を出していた





「きれー……」

「気に入ったか…?」




「もちろん!」




私は頭が吹っ飛ぶんじゃないかってくらい勢いよく顔を上げた





「でも、どうして急に私なんかに……」




再びイヤリングに視線を落として眺めた

うん、とても素敵だ



高そうだなー……いくらぐらいしたんだろう……

何かお返ししないと……でもこんな高そうな物のお返しなんて私何も買えそうにないな……




「べ、別に……理由はない……。近くの宝石店で見つけた」

「宝石店……ってあの綺麗な店員さんのいる!?」




「なんだ、知ってるのか?」

「えっ、あーいや、別にリゾットがその宝石店にいるの見たとかそういうことは」




ぎゃー!!!!動揺しすぎよ私!!!!何言ってるの!!!!




「み、見てたのか?」

「いやいや!あの美人な店員さんに口説かれてるの見てたとかそういうわけじゃな」




うわぁぁぁぁぁ!!!!!馬鹿!!!!私の馬鹿!!!!!

余計な事をまたぁあああああ!!!!





「口説かれてた?」

「えっ?ち、違うの?」




お互いキョトンとして首を傾げた




「え?だ、だって店員さんと話してて、少し顔赤くして……」




……あれ?

よくよく考えて私こういう事してるってなかなかの変態じゃない!!?




もうだめ、今日の私ほんとダメ

もう家帰って寝る




「あ、あれは別に口説かれてたとかじゃ……」




…………ん?

もしかして……気付いてない?




ありがとう天然!!

天然って素晴らしい!!!





「そ、そうなの?じゃなんで…」




天然をいいことにちょっと聞いてみる

するとプイッとそっぽ向いて言った




「…忘れた。覚えてない」




ちょっと…………顔赤くない……?

あの……このリゾット……可愛いんですけど!!




「あ、そ、そっか、そうだよね、一週間くらい前の話だものね」




あはは、とその場の空気を持ち直す

ということは……?




今回の件は私の勘違い?

じゃあ私の男探しもこれにて閉幕?




ちょっと残念……と思う反面嬉しさの方が強かったり……




「つけてみろよ」

「いいの?」




「当たり前だ……つけさせてやろうか?」

「え!?い、いいよっ自分でできるからっ……」




意外だあんな事言うなんて……!!

さすがに私の心臓がもたない……!!




「ど、どう?」




両耳につけて見せた

今思えばこんな上品なものが私に似合うわけ……




「ああ、似合ってるぞ」




……何だコレ……!!?ラブラブカップルみたいな……

いやいや落ち着け私今日のリゾットは少しおかしいだ




「だが、少しずれてる」




…………そうだ、おかしくなんかない

天然なんだった





「……え?ちょ、何……」

「?ずれてるから直したんだが……」




どこまで天然なのーーーーーっ!!

こんなこと普通しないよ!!!むしろわざとなの!!!?




「あああありがとっ!お、お返し!な、何か用意するから、ま、待っててね!それじゃ!」





恥ずかしすぎてその場からダッシュで逃げた

無理無理メンタルない私には無理だって!!!!




レベル高すぎ……あ、そうだ

ポー達に連絡いれとかなきゃ




……また何か言われそうだなぁ……










幼馴染みと私








(「これ、ください」)

(「これですか?可愛いですよね〜彼女さんにですか?」)

(「か、彼女……!?」)

(「フフフ、それじゃ可愛くラッピングしておきますね」)

(「…………」)









ミク様より6900番のキリ番でリクエストいただきました!

夢主はリゾットと幼馴染み
仕事関係でよく町に来てたポーといつの間にか仲良しに
そこでテトとも仲良しに

「町で楽しそうな事やってるよ!見に行こう!」
「いや、俺はいい」

的な感じで夢主だけ知り合いにーみたいな設定です