「あーあー・・・なんでこんな台風みたいな天気で学校が普通にあるわけ?おかしいだろ」



私は自分の家の玄関で、さしていたビニール傘の雫を振り払いながらブツブツ言った

ほんとに台風みたいな天気で、雷まで鳴っている



「ったく・・・おかげで制服がびしょ濡れ・・・ん?」



私は一人暮らしで、学校に行っている間は当然家に鍵をかけている

今日もそうだった・・・はずだ



でも、何故か家の鍵が開いている

・・・嫌な予感しかしない・・・



空き巣?・・・まさか

こんな古びた家に空き巣なんか入るかって話だ



「とりあえず、中へ入ってみよう・・・」



もし誰もいなくて、何も盗られていなかったら私の鍵のかけ忘れってことでいい

でも、誰かいたり、何か盗られていたら即警察



・・・・よし、行くか






雷鳴








時々聞こえる雷の音が妙に大きく聞こえる

私は足音を立てないようにして歩いた



・・・リビングに明かりがついてる・・・出かける前消さなかったっけ?

まぁいいや



これで誰か知らない人がいたら警察だ

できればそんな恥ずかしいことしたくないんだけどなぁ



私はリビングの入り口からそっと部屋を覗いた

人影は・・・見えない



誰も・・・いない?

そう思った時だった





「やぁ。おかえり ちゃん」

「っ!!?」

「まさか、俺が気付いてなかったとでも?」




後ろから急に重みがかかり、よろめきそうになったが、なんとか体制を持ち直した

そして、頭上から聞こえた声に、バッと首だけ振り返った





「いっ・・・いざ・・や・・・さん・・・・!?」




まさか空き巣の犯人がコイツだなんて・・・

考えもしなかった・・・




まず何で家にいるんだよ・・・?

どうやって入った?



いつからいた?

まさか私の部屋見た・・・!?




他にもいろんな疑問が次々と浮かび上がった

とりあえず、質問していく





「臨也さん・・・何で私の住所知ってるんですか・・・教えてなかったはずですよね」

「何でって・・・俺は情報屋だよ?調べることくらい簡単だよ」




・・・・調べるんじゃねぇよ・・・・

何勝手に調べてんだよ・・・・





「・・・じゃあ、何で家にいるんですか」

「決まってるじゃないか! に会いたかったから」




こっちかなり迷惑なんだけど




「な・・・何で私に会いたいんですか・・・」

「それは を愛してるから」

「“人間を”でしょう?愛してるのは私じゃない」

「まぁそうなんだけど。 のことは人一倍愛してるよ」




・・・・この話をしてたら永遠に続きそうだ・・・

次の質問




「どうやって入ったんですか」

「ひ・み・つ☆」




うぜえええええええええ!!!

何コイツ!!今の凄く腹立つ!!





「ハァッ・・・!!臨也さんって・・・」

「ん?何?」

「ストーカーって言葉をご存じですか」

「え? ストーカーに遭ってるの?誰?すぐに殺してきてあげるよ」

「じゃあ今すぐ家から出てって何処かでとっとと自殺してください。絶対にここで自殺しないでください。迷惑です」

「辛辣だなぁ。それに俺はまだ死なないよ」




不法侵入で訴えてやろうかこの変人を





「・・・今すぐ帰ってください。警察呼・・・」

さぁ、もうちょっと部屋片付けたほうがいいよ?」

「・・・・・・・・・」




一気に血の気が引いたのがハッキリ分かった

・・・・部屋見られた!!!?





「いいいいいい臨也さん・・・・もしかして私の部屋を・・・・」

「うん。見たよ」

「・・・・・・・・!!!」





ヘラヘラ笑いながら言うコイツがムカついてたまらない!!!

一人暮らしの女子高生の家に不法侵入した上に部屋を見るなんて神経おかしいんじゃないの!?




「警察呼ぶんでそっから動かないでください!!」

「いいのかな?そんなことしたら君の知り合い全員に君の部屋の画像を送るよ?」

「しゃっ・・・写メまで撮ってる・・・!!?」



臨也さんは自分の携帯の画面を見せた

その液晶画面には、見事に散らかった自分の部屋が映っていた




「帝人君や正臣君にも送ろうかな〜」

「やっ・・・よ・・・呼ばないからやめてください・・・!!」





こんな奴に頭下げるなんて・・・ある意味屈辱だ・・・

あ。そろそろ晩御飯の準備しないと・・・



一人暮らしってなったら当然晩御飯も用意されてないから、自分で用意しないといけないわけで

夕方近くに帰ってきた私は休む暇なく晩御飯の準備に取り掛からないといけない



今日は何食べよっかな・・・

オムライスにしよっかなー丁度ご飯いい感じに余ってるし、食べたい気分だし



私は臨也さんを放置して夕食の準備に取り掛かった

まぁ臨也さんもソファに我が物顔で座ってるし





の手料理、楽しみにしてるよ」

「・・・・食べたら帰ってくださいよ」

「そういえば初めてだねぇ。 の手料理」

「あんまり期待しないほうがいいですよ」




私は野菜室から玉葱を取り出して切り始める

あーいつやっても涙が・・・





「玉葱切って泣いてるの?かわいいね」

「ぅわ!?いつの間に・・・」




玉葱を切ってると、すぐ近くから声がした

いつの間にかキッチンに入って来ていたらしい



そして何故か私の腰に手を回している





「邪魔です。キッチンに入ってこないでください!」

「俺は見てるだけだから問題ないよ」

「大アリですよ。手離してください」

「それにしても、こうやってキッチンでいちゃいちゃしてるとさ、新婚みたいだよね」





ザク






「ぎゃあああああああ指切ったあああああああ!!!臨也さんが急に変なこと言うから!!」





結構切っちゃったよ!早く絆創膏貼らないと!!




「臨也さん!向こうの棚に救急箱あるんで取ってきてください!!」

「俺のあの言葉で指を切ったの?じゃあそれはつまり の心が俺の言葉で揺らいだってことだよね。即ち動揺した。俺のことが嫌いなら動揺なんかしないはずだから、 は少なからず俺に好意を抱いてるってことで・・・」

「どうでもいいでしょそんなこと!!長々とうるさいんですよ!!それより早く救急箱取って来てください!!」

「照れ屋だなぁ」





そう言うと、臨也さんは救急箱を取って来てくれた

・・・ただ箱を取って来てもらうだけに何分かかってんだよ私・・・




「指見せて」

「え?いいですよ、自分でできるんで」

「いいから」

「・・・・」




こうなったら臨也さんは一歩も引かないだろうな・・・

そう思って私は臨也さんに指を見せた





「結構パックリ切れてるねぇ。消毒した方がいいよ」

「おかげさまでパックリいきましたとも」




皮肉交じりで言った発言に耳を傾けもしないでクソッ

・・・やっぱり消毒ってしみるなぁ




「できたよ」

「あーありがとうございます・・・」





何気に綺麗にしてるんですけど

何?もしかしたら私より上手なんじゃない?




「俺、結構器用だから」

「・・・私は不器用だって言いたいんですか」

「まさか」





とりあえず夕食作らないと・・・

私はまたキッチンへ入った

























「もう一度言いますけど、これ食べたら帰ってくださいよ?」



晩御飯ができ、テーブルに向かい合わせで座って食べる

今日は台風の中、学校に行って、帰って来てからもバタバタして疲れていた



早く休もう・・・

その為には臨也さんを帰らせねば・・・





「俺、今日はここに泊まるよ」

「そうですか・・・・はぁっ?」




持っていたスプーンを落としそうになった



今なんて言ったの

「ここに泊まる」?





「い・・・今・・・「ここに泊まる」って・・・言いました?」

「言ったよ?」

「帰ってください」






何で泊まるんだよ!!

こっちは早くゆっくり休みたいんだから!!







「こんな天気で帰れると思ってんの?」

「こんな天気の中わざわざ家に来たのはどこのどいつですか」





来れたなら帰れよ

もうその思いでいっぱいだよ





「少しの間天気がマシになったからその時に来たんだよ」

「今雷が鳴っていようが警報が三つ出ていようが関係ありません。帰ってください」

「俺は帰るつもりないから。力ずくで帰らせてみなよ」





力ずくで?帰らせられることが可能だと思わないよ!!

やっぱり臨也さんには勝てない・・・!!





「それに、初めて会った時のお礼、まだ貰ってないからさ」

「あ・・・あの時は・・・・」

がナンパに遭ってるところを助けてあげたのにさ、礼も無しに逃げるってどうゆうこと?」

「た・・助けてもらったのは感謝してるんですけど、あの時は・・・すぐ近くに静雄さんがいたから、一緒にいると命が危ないと思って・・・」





案の定あの直後に私の真横を自販機が飛んで行ったのだけれど

あの時あそこにいたら、今の私は無いと思ってる





「まぁいいや。そのお礼は今日泊まることにするから」

「・・・じゃあ後で部屋案内します」

「別にいいよ。自分で勝手に決めるから」

「・・・それでもいいですよ。明日は帰ってくださいね!」




何かごちゃごちゃ口出ししたら何言われるか分からないから黙ってよう・・・




「それとさぁ」

「・・・まだ何かあるんですか」




なんだ。黙ってても結局こうなるのか





「俺の下で働かない?」

「は?働く?」

「情報屋の助手として働かない?もちろん棲み込みで」




つまり臨也さんの手伝いを・・・ってこと?





「給料弾むよ。家賃もかからないし、普通の生活もできるし。いいと思うよ」




給料弾んで家賃かからない・・・

いいと思うけど棲み込みってとこがなぁ〜




「言っとくけど、 に拒否権はないから」

「へぇ〜そう・・・ちょっと待て」

「欲を言えば学校は辞めてほしいんだけど」

「無視しないでください。あと働いてもいいけど学校は辞めません」

「じゃあとりあえず働くことは決定だね」





・・・しまったああああ!!

流れで言ってしまったあああああああ!!!!



働くって言ってしまったあああああああああ!!!





「ちょっ・・・まっ・・・ちが・・・」

「まぁ学校は続けなよ。あぁ、助手を辞めるっていうのも許さないから」

「嘘・・・・ほんとに働くの・・・!?」

「じゃあ、明日からよろしくねー。ご飯おいしかったよ。ご馳走様」





そう言うと、臨也さんはいつの間にか食べ終わっていた食器を流しに置いて、さっさと部屋を出て行ってしまった

・・・・・本当に働くの?



今まで生きてきて明日が嫌って思ったの、これで何回目だっけ・・・

でも・・・何か変な気持ち



なんでだろ?

・・・・あ。そっか



私、嬉しいんだ

臨也さんの助手になれることが嬉しいんだ




・・・つまり私は臨也さんに負けたのか!!

やっぱり勝てないわあの人には・・・




落ち込むかと思ったけど、何故か嬉しそうに笑っている自分がいる

・・・多分、そんな自分に笑っているんだと思う




なんでかな

雷の音が、さっきより小さく聞こえる




おかしいな

そんなに時間経ってないはずなのに

















あとがき

台風とほぼ同じ天気なのに学校があった夢主
帰って来て夕食作って食べてお風呂入って、あと細かい用事したらさっさと寝よう
とか思ってたんだけど臨也がいて/(^p^)\ってなったとこ

夢主は鈍いのかツンデレなのかよく分かりません←
臨也はウザヤっていう方程式があるんで頑張ってウザい喋り方にした

夢主がナンパに遭った後にも何回か臨也に会ってるといい
偶然だったり、臨也から会いに来たりとか
でも夢主宅に来るのはこれが初めて
天気も悪いから仕方なく夕食だけ食べさせてさっさと帰ってもらおう
って思ってたけど泊まることに

夢主は結構料理上手だといい

最後らへんは、自分が嬉しいって思ってるってことに気付いてポワポワしてて雷の音が小さく聞こえる錯覚とか・・・ね?

夢主の歳は帝人や正臣と同い年か一つ上


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