私は、学校の屋上から下校する生徒たちを見下ろしていた

屋上にはまだ五〜六人の生徒がいた


私の近くには、誰もいないが



残酷なまでに優しく、




ああ

人間って、なんて単純なんだろう


ちょっとしたことで、皆私から離れていく

私が、平和島静雄の妹だからという、そんな理由で


それに、あの男のせいでより離れてく

でも、この環境が結構好きなのかもしれない


一人の方が、落ち着く

アイツには消えてほしいけど



「あれ〜? ちゃんまた一人ぼっち?」



後ろから聞こえてきた爽やかな声を、敢えて無視する

振り向かなくても、この声とうざさから誰か丸分かり



「ねー無視しなくてもいいんじゃない?一応俺“先輩”だし?」

「・・・昨日一緒にいた男子生徒、今日は一緒じゃないんですか?折原先輩」

「あーあの子?ついに不登校かー残念だったねぇ。折角近付いてきてくれる人ができたのに」



私は折原先輩に向かって睨んだ

こんな事はいつもの事だが、私に関わったせいで不登校になってる生徒が増えている


不登校にしているのは、目の前のこの男、折原臨也先輩



「また一人ぼっちだねー・・・・って、あ。俺がいるから一人じゃないか」

「先輩、誰のせいで私が今こうなってるのかご存じですか?」

「二人っきりの時はさ・・・・」



声が途切れたと思ったら、今度は片方の肩を掴まれて、向きを180°変えられた

背中にフェンスが当たって、カシャンと独特の効果音が響いた


顔の両隣には、先輩の学ランの黒い袖が見えた

先輩の顔が、私の顔と同じ高さぐらいになって、嫌でも目が合ってしまう



「・・・なんですか?」

「二人っきりの時はさ、敬語、やめようよ。あと、俺のことも先輩じゃなくて臨也でいいよ。・・・



そう言われて、初めて今屋上にいるのが私と先輩だけということに気が付いた

・・・きっと、私と先輩という二人と同じ場所にいたくなかったのだろう


こんなことも、もう慣れたけど



「結構です。“先輩”」



わざと“先輩”を強調して言った

相変わらず先輩はへらへらとしている



「手厳しいねぇ は・・・そんなんじゃあ男なんてできないよー?」

「いりません。どいてください。邪魔です」

「でも例え に男ができたとしても、俺がそいつを退学にしてやるし別にいっか」

「聞いてます?どいてくださ・・・」



言い切る前に先輩の顔が一気に近付いた

突然のことに驚いて、不覚にも目線を逸らしてしまった


視界の端で、先輩の口角が上がったのが微かに見えた



「もしかしてさ・・・・・照れちゃった?」

「びっくりしただけです。からかわないでください」

「アッハハハ!!純情なんだね は!フハハハハ!」

「笑い過ぎです。うるさいんでやめてください」



体制は同じままで高らかに笑っている先輩を一睨みして言った

本当に、この人は苦手だ・・・



「・・・帰るんでどいてくれませんか?」



もういやだ・・・

先輩と一緒にいると余計に虚しくなる・・・


さっさと帰って寝るべきだったんだ・・・



「もう帰るの?今日は早いんだねー。いつもより全然早いじゃない。どうしたのさ?」

「先輩といると疲れるからです。早く帰って寝ます」

「じゃあこれから俺の家に・・・」

「結構です」



腕をどかしてくれる気配はない

そっちがその気ならこっちだって



「冷たいなー って・・・。一回ぐらい抱かせtグホッ!!」



嬉しそうに話している先輩のみぞおちを思いっきり殴った

見事に命中


それと同時に先輩の体制が崩れて、その隙に私は先輩から離れた

そのまま階段を走りながら下りていく



「じゃあさようなら。折原先輩」
































「よくもやってくれたねー ちゃーん?」

「・・・なんでもうここに居るんですか?」



私が階段を下り切って、下駄箱へ行こうとしたらこの様だ

先程とまったく同じ体制


どうやら私の真後ろにいたらしい

・・・・なんて怖い奴・・・・



「確かに命中したはずですが」

「命中したよ。アレは痛かったな〜死ぬかと思ったよ。本気でやったでしょ」

「本気じゃないと私は身動きがとれなかったもので」

「まぁ急いで下りてきたからいいけどさ・・・・・それより」



じりじりと近寄ってくる先輩

こちらも壁が背中にぴったりくっついていて限界だ



「タダですむと思ってる?」

「思っちゃ悪いですか」

「ハハッ!さすが 。強気だねぇ。そんな が好きなんだけどね」

「いつも言ってますが、からかわないでください」

「仕方ないなぁ・・・今日だけは、その威勢の良さに免じて許してあげる。次からは許さないからね」



そう言いながら先輩は離れた

私に背中を向けたまま手を振りながら去って行った


私は暫くそのままその場に残った

なんでだろう・・・凄く変な感じ


・・・きっとこんな日が何日も続いたから、疲れてるんだ

やっぱりさっさと帰って寝よう


下駄箱へ行って靴を履いていると、兄さんがいた

丁度今から帰るらしい


私達は、一緒に帰ることになった



「こんな時間まで何やってたんだ?」

「・・・暇だったから」

「まさかまた臨也の野郎に・・・!?」

「大丈夫だって。もし何かされても自分でなんとかできるし」

「そうか?ならいいけどよ・・・なんかあったらすぐ言えよ?」

「うん」


まだ何か言いたそうだった兄さんより少し前を歩いた


「早く帰ろうよ。暗くなる前にさ」

「・・・そうだな」


そう言うと兄さんはフッと笑って、私の隣に並んだ

兄さんと並んで歩く、この時間が好きだった


なのに、何か足りない

今までも、ちょっとだけどそう思うことがたまにあった


「なぁ

「うん?」

「いろいろ・・・負けんなよ」

「・・・・・・・・」



突然何を言い出すかと、正直驚いた



「う、うん」


負けるなと言われた時、真っ先に思い浮かんだのが折原先輩だった

・・・・まさかね


あの人は私のことなんか好きじゃない

遊びなんだ


だから、受け入れたら負ける

そう考えたのかもしれない


でも、『何か』が足りないと思ってる時点で、負けなのかもしれない

悔しいけど


もしかしたら

出会った時から、もう負けていたのかもしれない


かも。じゃない

負けていたんだ


そう認めた私は、もう先輩に負けていたんだ

先輩に、惚れてたんだ




















あとがき

臨也、静雄達が来神学園時代のお話

夢主は静雄の妹で、皆からちょっと避けられてる存在
だってお兄さんがシズちゃんだからさ、妹になんかしたらヤバいんじゃね?っていうアレだよ
シズちゃんがちょっとシスコンになってるのは・・・・夢だかr((((

夢主と臨也は・・・・
多分夢主の入学式の時に臨也が目つけたんだと思う
そっから今まで付きまとってたんだと思う

夢主の性格は冷静で大人しい感じ
今までの生活がそうさせた。とかいう設定でもいいよね!


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