友達




「勝負は決まっただろ?大人しく殺されてくれよな」

「・・・そうね。これ以上やっても、私が勝つことは絶対あり得ないだろうし」



オレの前には、さっきまで戦っていた女が血だらけになって床に座り、壁にもたれた体制でいる

オレは仕事で、この女・・・ の家族の抹殺を依頼された



生き残っているのはこの女だけで、他の人間は皆殺した

あとは、コイツを殺せば任務完了ってわけ



「殺るなら早めにね」



そう言いながらオレを見上げている

・・・と言っても、座った と立っているオレとの身長の差はあんまりねーから、見上げるって言うほどのモンでもないけどな


けど・・・ は死が怖くねーのか?



「今から死ぬのに・・・なんで落ち着いていられんだよ・・・?」

「落ち着いてるように見えてるだけよ。私だって、殺されるのが怖くないわけじゃないもの」



さっきと変わらない口調で言った



「・・・本当は凄く怖い。それに、なんで殺されなきゃいけないのか分からない。私たちは、家族で普通に暮らしてきてたつもりだったのに・・・」



オレを見上げていた顔が、今度は床を見ていた

・・・オレは知ってる



なんで の家族の抹殺を依頼されたか

それは、 の父親が麻薬の密売をしていたからだ



強力な麻薬を密売し、それを家族に黙って生活していた



まぁ・・・こんな話珍しくもねーけど、父親の知り合いが真面目で、いろいろ通ってゾルディックに依頼が来たらしい




「・・・知りたいか?」

「・・・?」

「なんで・・・殺されるか」



俯いていた顔がゆっくり上がって、またオレの顔を見た

少し・・・驚いてる顔だな



当然だろうけどさ



「・・・教えてくれるなら教えて」

「いいぜ。・・・アンタの父親が、麻薬の密売をしてたんだ。それからまぁ・・・いろいろ通ってオレん家に依頼が来たってわけらしいぜ」



一瞬、 の目が見開かれた

の目が、月の光で輝いた



「嘘・・・まさか・・・そんな・・・」

「マジマジ」

「知らなかった・・・」



なんで・・・疑問に思わねーんだ・・・



「何で・・・自分の父親が犯した罪を、自分達が償わなきゃいけないのかとかって思わないんだよ?何の関係もない自分が!」

「・・・父さんがそっちの道に行った理由は何か知らないけど、もしかしたら私達家族に問題があったのかもしれないから。そうだったとしたら、私達の所為で 沢山の人が死んでしまったことになる。・・・これで、全て償いきれるなんて思ってないけど」



だから死んでもいいっていうのか?

言いたいことは何となく理解できるけど



「それって、結局ただの自己満足じゃん」

「・・・分かってる。それでも・・・!」

「そうやってまで家族の罪を償いたいって思ってる はスゲーよ。でもその分馬鹿らしいとも思うけどな、オレは」



どういうことかって顔してんな

それほどくだらないってことだよ



「罪を犯したやつが家族だったとしても、結果は同じだろ?償いは本人がやらなきゃ意味ねーんだよ」

「それが・・・父さん以外の私の家族を殺した人のいう言葉かしら?」

「殺してなんかいねーって。父親以外な」

「えっ?」



さっき殺したって言ったけど、アレ嘘なんだよな

まさかオレが仕事をちゃんと片付けないなんてな・・・自分でも今まで思わなかったよ


を初めて見た時、なんかいつもと違ったんだ

これまではターゲットを見てもなんとも思わなかったけど・・・ は違ったんだ


には、生きてほしいって思ったんだ

死んでほしくないって


だから、 の父親だけ殺した



「でも・・・皆血を流して倒れてるじゃない・・・」

「ああアレ?仕事を始める前にちょっと喉乾いちゃってね」



そう言いながらオレは にトマトジュースの缶を見せた

の家の冷蔵庫にあったジュースだ



「それたしかウチの冷蔵庫に・・・まさか、あの血って・・・ソレ?」

「ピンポーン」

「じゃあ倒れてるのは?」

「気絶させてるだけ。ちょっと強くやりすぎちまったかもだけどな」

「でも・・・生きてるのには変わりないのね!?」


オレが頷くと、 はホッとした表情になった

さて、オレが一番言いたかったことでも言うか



「なぁ

「何?」

「オレの・・・友達になってくれよ」



キョトンとした顔だな

まぁ・・・突然こんなこと言われたら誰でもこんな反応するか



「と・・・友達に?私が・・・?」

「他に誰がいるんだよ」

「そ・・・そうよね。・・・なんでいきなり?」

「・・・そうゆう関係のやつが・・・欲しいんだ」



今までオレは、親父やゼノじいちゃんの拷問をずっと受けてきた

それをずっと耐えた


一人で


家は山の中だし、学業だって通信だった

家の外に出るのは、今みたいな仕事の時だけしか記憶にない


家族以外の顔なんて、執事達の顔ぐらいしか見てねーもんな

・・・だからかな


には、生きてほしいって思ったのは



「家族のことが気になるなら、無理にとは言わない」

「え・・・そんな・・・でも、命助けてもらったし、そりゃあ家族のことももちろん気になるけど・・・」

「命救ってやったからとか、そういうのはナシな」



そんなのだったら、ならなくていい

なりたくないんだ


自己中だって分かってる

でも、心から友達って思える奴が欲しいんだ



「そんなんじゃないわよ。・・・私も、そういう関係の人が、欲しかったから・・・」

「まじで・・・?そんじゃあ話は早いな!決定!!」

「でも・・・貴方の家族から見れば、私は殺されたはずの人間でしょ?その人間が生きてるって知られたら・・・貴方は・・・」

「オレに考えがあるから任せろって。それに、オレはキルア。これからはそう呼んでくれよな」

「え、あ・・うん。キルア・・・考えって何?」



がオレに訪ねてきた

オレはにんまりと笑って言ってやった



「男装するんだよ!上手い具合に化粧とかしてさ!」

「だっ、男装!?いっ嫌よ恥ずかしい!!それに誤魔化せるはずがないじゃない!いつかバレるわ!」

「大丈夫だって。バレる前にあんな家出てってやるって」

「それって、私のために・・・?」

「オレの意思だよ。あんな殺ししかしない家庭、もう嫌なんだ」



オレだって人間だ

普通に友達と遊んで、普通に暮らしたい


殺しなんてもううんざりだ



「キルアの意思なら・・・文句は言わないわ」

「んじゃあ早速行くか!」

「え!?もう?」

「思い立ったが吉日っていうだろ」

「もうすぐ日付変わるんだけど・・・」



ブツブツ言ってる を気にせず、オレは腕を引っ張って立たせた

これから、楽しい毎日が始まるんだ!













あとがき

流血表現アリって書いた方がいいのかな
家族の血はトマトジュースだけど夢主のは本物の血
だってあとからキルアに教えられたもの

時間は夜中くらい
夢主が「もうすぐ日付変わる」って言ってるから
月も出てるから

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