決めたのに
今日、彼女がこの村から出て行ってしまう。
ある国の王子に見初められて。
こんなことになるんだったら、あの日、あの王国へ彼女を連れて行くんじゃなかった。
「一緒に行きたい!」
と言った彼女を、どんなことをしてでも止めておくんだった。
「ははっ・・・」
少しでも、あの日を悔やんだ自分がおかしくて笑ってしまう。
今更悔やんで何になる?
もう二度と、彼女のあの優しげな笑顔を見れなくて?
そんなの理由になんてなりはしない。
どんなにあの日を悔やんでも、もう元には戻らない。
戻れない。
何度夢であってほしいと願ったことか。
自分でも分からない。
気がつくとオラは村の入り口に来ていた。
そこには、彼女の姿もあった。
「・・・T−ボーンも・・・来たんだ。」
「・・・・・」
何て答えていいのか分からず、少し笑う。
「・・ねぇ・・。今だから思うのかな・・・凄く、この場所が懐かしい。」
「と初めて会った場所・・・だっぺ。覚えててくれたんだっぺか〜。」
「そうだよ。」
そう。彼女はこの村の血は流れていない。
ここに倒れていた彼女をオラが見つけて、今まで一緒に暮らしてきた。
「あんときゃー驚いたっぺ〜。
小さい女の子がこんなとこに倒れてたっぺから〜。」
「あはは!あの時はお腹減ってたんだもん!!・・・でも、助けてくれたのがT−ボーンでよかったよ。」
「オラだって、と今まで一緒に暮らせて楽しかったっぺ!!」
本当に、おめえと一緒に暮らせて楽しかった・・・
「あれから10年か・・・早いね〜」
「そうだっぺなぁ」
この時間が止まってしまえばいい。
なんて彼女に言ったらどうするだろう。
きっと笑って誤魔化すだろう。
彼女とずっと話していたい。
いつからこんな風に思うようになったのだろう。
「そういやぁ、もう仕度は済んだっぺか?」
「うん。もう終わった。あとは着替えるだけ。」
「・・・いつ・・村を出るんだっぺ?」
「お昼ご飯が済んでから。」
「そうだっぺか・・・・。」
もうすぐ・・
彼女との別れが来る。
昼メシを食べたら彼女はすぐに部屋に向っていった。
そして、出てきた彼女を見て、オラは言葉を失った。
「・・・・どう・・かな・・・」
彼女は少し照れた様子で聞いてきた。
「っ・・に、似合ってるっぺ!!今の、すげーキラキラしてて綺麗だっぺよ!!!」
彼女の姿は、真っ白で綺麗なドレスを着ていた。
首飾りが日の光に反射して、本当に綺麗だ。
こんなに綺麗でかわいい彼女を他の男に取られるなんて・・・・
「本当?よかった〜!」
「おう!・・でも、その格好で行くっぺか!」
「ううん。移動はもっと動きやすいの。でも正装っぽく・・ね!」
「じゃあ何でそれ着たんだっぺ?」
何故ドレスを着たのだろう・・?
「え・・?ん・・とね。一番に・・・T−ボーンに見てほしかった・・・から・・・・。」
少し赤面しながら彼女は言った。
その言葉と彼女を見て、自分の顔も赤くなっていくのが分かった。
「じゃ・・・そろそろ着替えるから・・!」
バタン!と勢いよくドアを閉めた。
そして・・とうとうその時がやってきた。
彼女は、村の皆一人ひとりに声をかけていた。
最後のオラのところへ来た時には、もう彼女の頬には幾筋もの涙が流れていた。
それでも彼女は笑顔でいた。
その姿に自分も泣きそうになった。
「今まで、一緒にいてくれて、本当にありがとう。」
T−ボーンに助けてもらって10年・・。
この10年は私の一生の宝物だよ!!」
「・・・!」
我慢できなくなって、オラは彼女を強く抱きしめた。
周りの目なんて気にしてられない。
「T−ボーン・・・」
彼女も強く抱き返してきた。
そして、彼女は小さな子供の様に泣きじゃくった。
「車・・・待たせちゃ悪いから・・・」
そう言って彼女はオラの腕から出た
車に乗り込む彼女。
車が走り出す。
彼女は窓からずっとこっちを見てる
ふいに、涙が込み上げてきた。
絶対に泣かねぇって決めたのに。
切ないのかシリアスなのか分からん作品ができた
こーゆー話は苦手なのか・・・そうか・・・
ある国の王子=リゾットでいいと思うよ
そこらへんは皆様のご想像にお任せいたしまする