011:迎え
「うーん、いい天気だなー!」
背伸び超気持ちいい!
甲板に寝そべって日向ぼっこしながらするの超気持ちいい!!
太陽さんこんにちは!
素敵な日光をありがとう!
今日は特に何か言いつけられてるわけでもないし、最近忙しかったから今日はゆっくり休むんだ!
あの枝事件から一週間くらい経ったかな。
その期間、殺される勢いで働かされたからなぁ。
一体どうしてなんだ。
しかも内容が全部雑用。
他に出来る事なんて何一つ持ってませんが試しにやらせてみるっていう考えも全くなかったようで。
でもなんか元就さん、今日いつもよりちょーっとだけ機嫌が良いみたいで。
この前にみたいに日輪がなんとかって・・・
太陽さん好きなんだね!
私も好きです。
さぁ!
元就さんの機嫌が悪くならない内にぐっすり・・・
あれ、ちょっと曇った?
目を閉じて赤みがかった視界が、急に真っ暗になった。
ん?なんでなんで?
目を開けて右と左を見てみるけど、陰になっているのは私のところだけだ。
あー雲が被っちゃったのか。
じゃあすぐ戻るからいいや。
そう思って再び目を閉じた。
でもあれ?全然明るくならない。
今度は真上を向いたまま目を開けてみる。
さっきは気付かなかったけど、黒い点がちらほらと太陽と重なって見え隠れしていた。
なーんだ鳥が飛んでたのかー。
それにしても結構大きい鳥だなー。
ん?なんか降りてきてない?
まさかまさか、そんなのあり得ないってー。
あ、でも糞落とされたら嫌だな、それだけは勘弁。
んーでももう横になって背伸びしたし、動くの面倒だなー。
ま、どうせ途中で進路変更してくれるでしょ。
このまままっすぐ私のとこまで降りてきちゃったりしてー。
ふっふっふ、こんなこと言ったら本当になるから止めとこ。
んん?よく見たら人がぶら下がってるんじゃーん。
そりゃあ鳥もまっすぐ降りて・・・・・・
は?
「え!?嘘嘘!ちょっち待っちちょっち待っち!」
一瞬で頭の中が真っ白になった。
そりゃそうだよ!
鳥に人がぶらさがってるって考えたら焦るよ!!
何?もしかしてあの人縛られてたり?
大変だ!!
「も、元就さ、うぐっ」
「あ、なんだいたの?なーんでこの場所から移動してないのよ。」
乗ってる!
男が一人私の上に乗ってる!!
余裕ぶっこいてる!!
この人捕まってたんじゃなくて自分から鳥にぶら下がってたんだ!!
と、ということは・・・!!!
「ぎゃーっ!敵襲!敵襲ーーー!!」
「ちょっ、何ばらしてくれちゃってんの!?やっとこさ見つけたってのに!」
「見つけたって何を!!そ、それより早く降りてよこの変人!」
「変人って・・・・・・まーいいから、敵が来る前にさっさと帰るよ。馬鹿がさっき呼んじゃったから。」
「な、なんで私の名前を!?」
「なんでって、こんな時にふざけてる場合じゃないっしょ?」
「あ、もしかして元親のとこの?」
「なーに言ってんの!・・・・・・あーらら、来ちゃったじゃない?」
「何者!」
「こいつ・・・・・・確か甲斐の忍じゃなかったか!?」
「猿飛佐助か!?」
皆・・・!!よかった間に合った!
来てくれたのは嬉しいけど、誰一人として離れろって言ってくれなかったのはちょっと傷ついたよ!
「ま、今殺すつもりはないから安心しなよ。」
「甲斐の猿が何をしに来た。」
あっ元就さん!よかった助けて!
なんか物騒な物向けてるけど何それ、大砲?
「預け物を返してもらいに、かな?」
「預け物?」
「そ、この子ね。」
「・・・はい?私?」
皆の視線が私に集中する。
いやいや私別にそんなんじゃな、
「・・・貴様甲斐の者であったか。我が毛利の偵察でもしていたのか?」
元就さんが鬼のような形相で私を睨みつける。
超怖い!!
「ちがっ、」
「あ、そーなの?いい仕事したねー、給料弾むんじゃない?」
「貴様・・・生きて帰れると思うな。」
「だから違っ・・・私は甲斐の者じゃ・・・!!」
「まー特に用事はないから、この子連れてお暇するよ。ばいばーい。」
「待ってまだ話は済んでな・・・うわっ飛んだ!!降ろして降ろして!!」
私は突如現れた謎の男に片腕で抱えられ、男が来た時と同じように空を飛んだ。
下を見ると真っ青な海で、ヒュッと息をのんだ。
「逃がすでない!撃て!!」
「わーーー!!待って待って元就さん!!そんなもの撃ったら死んじゃう!!ほんと死んじゃうから!!」
元就さんは大砲を撃ってこようとしたけど、さすがにそれはイカン!!
だ、大丈夫だ!私は元親の弱味っていう存在だから殺すまではいかないはず!!
案の定撃ってくる気配は消えた。
ありがとう元就さん!いや、元就様!!
「何?他の軍でも人気者なわけー?俺様嫉妬しちゃうなー。」
「元はと言えばアンタが・・・!!」
「せっかく俺様が直々にお迎えしてあげたのにアンタ呼ばわりなんて・・・かわいそうな俺様。」
「迎えとか帰るとか・・・訳わかんない事ばっかり言って!早く船に戻してよ!今日本当は一日中休みの予定だったんだから!」
「・・・・・・まさかとは思うけど・・・・・・俺様のこと覚えてない?」
「何言ってんの?初対面なんだから覚えてるも何もないでしょ。」
一刻も早く船に帰りたいのに・・・・・・
もう半分くらい諦めてるけど。
だってこいつ、返してくれる気さらさらなさそう、っていうか絶対ないもん。
「あちゃー・・・・・・最悪の事態ってやつ?もしかして。」
「ほんとにね・・・・・・。」
「・・・・・・とりあえず、屋敷に帰ってからだね。それまで寝ててよ。ちょっと手荒だけど許してね。」
「え?何する・・・うっ」
ほんの一瞬の間に片膝に体を乗せられ、空いた手で首に手刀をいれられて、私の意識は飛んだ。
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