001:海賊達の宴
空は晴れ渡り、風も強し過ぎず弱すぎず、波の流れも穏やかで、絶好の航海日和だ。
そこへ、一隻の船が通った。
船内では男達の盛大な笑い声や会話が飛び交っていた。
「今回の収穫は今までで一番じゃないか?」
「ああそうだろうよ。なんてったって“偉大なる航路”の海図を手に入れたんだぜ?」
「見ろよ、バギー船長もハデに騒いでらぁ!」
その船は海賊船。
“バギー海賊団”だ。
船長である“道化のバギー”は部屋の中央にある円の形をした、一番広いテーブルにいた。
「野郎共ォ!!飲んでるかぁ!!」
「ヨーホー!!!」
クルーは皆酒の入ったコップを片手に掲げて叫んでいる。
しかし、一人だけ静かに、ただ座っているだけの者がいた。
一番目立つ中央のテーブルに座っているにも関わらず、酒も飲まず、コックの出す料理にも手を付けず、ただただその様子を見ているだけだ。
その者は、真っ白な服の上に、新月の真夜中よりも黒い、フード付きのマントを目元が隠れるほどまで、深くかぶっていた。
フードの隙間から覗く瞳は、透き通ったような綺麗な緑。
髪は、深すぎて美しいとも思ってしまうほどの黒のマントによく映える、白銀。
肌は陶器のように白く、滑らかだ。
「おい!こんな時くらいフード脱げ!そしてお前もハデに騒げ!!ぶわっはっはっはっは!!」
と呼ばれたその人は、沈黙で答えた。
そしてゆっくりと細い腕を伸ばし、フードを落とした。
だが、フードをから現れた彼女の顔は、無表情だった。
そんなをよそに、周りの者たちは騒いでいた。
「美人は三日で飽きるって言うが、ありゃ嘘だな。」
「ばか、お前それはだからの話だろうが。」
「男も女も魅了するその美しさ、分けてほしいねえ。」
「やっぱ雪国の女は一味違うねぇ!」
次から次へと言葉が流れる。
その中には女も混じっている。
しかし、はその言葉を何一つ聞いてはいなかった。
それは、単純に考え事をしていたからだった。
理由は、今夜行うことにあった。
(どうやって船を抜け出すか・・・)
は今夜、この船を抜け出すことを決意していた。
“偉大なる航路”の海図を持ってだ。
何故、は抜けることを決意したのか。
それは、彼女の過去に大きく関係していた。
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