「はぁ・・・凄い嵐・・・」
(この船、ドーレ港までもつの?)
001:出発の嵐
「
、君は寝ないのか?」
「え?ああ、うん。起きてるよ。眠くないし、クラピカは寝てなよ」
「そうさせてもらおう」
(よくこんな状況で寝られるよねー・・・我が兄ながらちょっと感心するわ・・・にしても、これからどーしようかなぁ。港まで着くのにこの嵐を乗り越えない
といけないわけで、大分時間かかるんだろうなー。
クラピカ寝たしなーうーん)
その時、
の頭に、ある言葉が過ぎった。
(“幻影旅団”・・・か・・・)
幻影旅団は、四年前にクルタ族を虐殺したA級首の盗賊団だった。
とクラピカはそのクルタ族の生き残りだったのだ。
(蜘蛛は必ずこの手で・・・!皆の瞳も全部取り戻す!!)
「おっ・・・ととと」
(うっわ!何コレ!めっちゃ揺れる!!乗り物とかに強くてよかった、ほんとに。そーでなきゃ他の人達みたいになるところだった・・・)
やクラピカ以外の者は皆かなり船酔いしたようで、うんうんと唸っている。
「それにしても・・・」
「なんで男装なんかしないといけないのか・・・。あの時どーしてあんなこと言ったのかな〜?でも、あーでもしないと絶対にクラピカ連れてきてくれなかった
だろうし・・・。
クラピカって頭いいけどどっかがずれてるんだよなー・・・」
ハァ・・・とため息を一つついた。
そう。
は男装していた。その姿は誰がどう見ても男の姿だった。
その理由は、数日前にある。
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「だめだ」
「えぇー?どーしてー!?」
とクラピカはハンター試験のことでもめていた。
「あたしもハンターになって蜘蛛を捕まえたいの!皆の仇を取りたいの!それがどーしてだめなの!?」
「女子供は昔から人質になりやすい。ハンター試験でもし
が捕まって、私が脅されたら?
仮に試験を無事合格したとしても、そうなったら蜘蛛に捕まったらもう捕まえるどころか仇を討てなくなる可能性もある」
「人質を取るような奴にあたしが負けるとでも思ってるの!?第一、そんな奴に人質になるようなあたしじゃないわ!!」
「それが危険だと言っているんだ」
「だからって・・・」
ハッと
は言葉を止めた
(女だから・・・いけないのか・・・)
「ねぇクラピカ、女だから・・・だめなんでしょ?」
「・・・まぁな」
「ふーん・・・」
はクラピカにバレないように小さく笑みを浮かべた。そして、布屋へ走っていった。
数十分後
「クラピカ、これなら文句ない・・・だろ?」
再び現れた は男装をしていた。
布屋で買った布で胸を潰し、クラピカと同じ服で、声を少し低くさせて。
「・・・ ・・・」
その姿を見たクラピカはこう言った。
「そーいうのを屁理屈と言うのだよ・・・」
「うるさいな!こーでもしないと行かせてくれないでしょ!」
「許可しないかもしれないだろう?」
「そーなったらもうどんな手を使ってでも行ってやる!」
暫く二人は互いに睨み合っていた。
「ハァ・・・私の負けだ。君の勝ちだ。」
クラピカはやれやれといった感じで言った。
「え?・・・本当!?」
「但し」
「なっ・・・何よ・・・?」
「今の
は一見男に見えるが、完璧とは言えない。外見だけでももっと男らしくするんだ。いいな?」
「うっ・・・はあい・・・」
こうして現在に至るのだった。
「ん?だんだん晴れてきた・・・かな?」
は、窓の外を見ながら呟いた。
「ほい。水だよ。この草噛むと楽になるよ」
「あ、スンマセン」
見ると、一人の少年が船酔いしている人達に水や草を分けていた。
「う〜ん・・・ライバルを増やしたくはないけど・・・このままっていうのも可哀そうだし・・・よし!」
そう言うと
は立ち上がり、一人の男の近くへ歩み寄った。・・・かなり酔っているらしい。
「ねぇ君!こっちの人にも水持ってきてくれないか?」
少年に声をかけると、快く返事をしてドタドタと水を取りに行った。
「でもなぁ・・・こんなに大勢じゃ埒が開かねーぞ・・・」
周りを見ると、ほとんどの者が床に伏せていた。
「持ってきたよ、水」
「お!ありがとな」
は、少年から水の入ったコップを受け取り、男に渡した。
「ねぇ、君名前なんていうの?オレ、ゴン!」
「オレか?オレは
だ」
「へ〜え。いい名前だね!」
「そうか?ゴンっていう名前もいいと思うぜ?何か・・・こう・・・力強い感じ?」
「そうかなー?」と言い、ゴンはえへへ!と照れ臭く笑った。
ユリとゴンは、船の甲板を歩いていた。
すると、ゴンはいきなり立ち止まり、海の方をじっと見た。
(・・・?何だろう・・・)
「どーしたんだ?ゴン」
「どーした?小僧。今頃船酔いか?」
が問うのと同時に、この船の船長が声をかけてきた。
「もっとでっかい嵐が来るね」
(え?)
「ほう・・・なぜそう思う?」
「風が生ぬるくて塩気が多いし、ウミズルも注意しあってるから」
「小僧!鳥言語がわかるのか!?」
(鳥・・・言語?って・・・鳥の言葉のこと・・・かな?)
は鳥言語を知らなかったため、二人の会話を黙って聞いていた。
そして、船全体へ嵐が来ることを知らせた。
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