「これを持って今日から素振りを一日に千回やるがよい」
そう言われて毛利さんから渡されたのは木の枝
どこにでも落ちてそうな細っこい枝
009:修行・・・?
「これで・・・ですか」
「他になにがある」
「まぁ・・・また斬新なものを・・・」
・・・なんかおかしくね?
この枝絶対途中で折れるよ?
それ以前に私が1000回も振れると思いますか
私よりこの枝が先に死ぬよ?
「あのー・・・せめてもうちょっと丈夫そうなものをー・・・」
「贅沢言うでない」
「贅沢に入るんですかこれ!!ただもうちょっと枝を丈夫にしてもらいたいだけなのに!!それにこの枝ってその辺に落ちてたやつでしょう絶対!!」
いくらなんでもこれは・・・・あんまりだ
早く元親んとこ帰りたい
「愚劣な・・・!我が貴様の為にと思うて、拾ってきた物の中から更に選び抜いた物を・・・!!」
「ほらほらほら!今拾ったって言いましたよね!認めましたよね!やっぱり落ちてたんじゃないですか!!それより他にもあったんですか見せてくださいよ!」
「フン・・・ならば
が一番良いと思う物をこれから選ぶがよい」
そして私の前に出された毛利さんの戦利品たち(拾い物たち)
全部で三つ
一つ目、石
二つ目、草
三つ目、枝
「さあ選ぶがよい」
「なんかいろいろ間違ってるー!!」
何を基準にしてこれになったんですか!!
ていうか何を基準にしたんですか!!
「選べませんよこんなの!!」
「貴様我を愚弄する気か」
「愚弄も何もないですよ!!草とか何に使うんですか!!」
「我に聞くな。自分で考えるがいい」
「無理無理!石とか枝はまだ分からないこともないですが草は無理ですって!!」
「ならば我の言う通り、枝でも振っていればよかろう」
「まぁそうですね。毛利さんの仰る通りでございます」
・・・・なんか凄い屈辱っていうかなんというかなんですけど・・・・
なんだろうね!今なら謀反起こしそうだよ!!
落ち着け自分、感情に呑まれるな
とりあえず考えた修行法を整理しよう
石・・・的とか作って命中させるように練習する→飛び道具とか使えるようになる(かも)
枝・・・素振り→多少は慣れて刀とか振る。だんだん太い枝とかにしたらいいよね!
草・・・ちょっと無理がある
うん・・・・うん・・・・大人しく枝振っていよう
的とか作るの面倒だし・・・・
途中で絶対折れるか私の体力が尽きるかだけど振ろう・・・
「精々頑張るんだな」
「はい・・・あ!毛利さん!」
この場を去ろうとした毛利さんを引き留めた
だって・・・え・・・?修行は・・・?見てくれないんですか・・・
どこ行くんですか
と、聞こうとしたら毛利さんに遮られた
「名前で呼べ」
「・・・・はい?」
え?名前で?どうして?
「我が軍にいて我を“さん”で呼ぶのは貴様だけぞ」
「えっ本当っすか。それはご無礼を・・・ご無礼?」
ちょっと待てよ?
明らかに毛利さんは私より身分は上なはず
それに私は居候
なんで名前で呼ぶ必要性が・・・
「居候の身で命令が聞けぬというのか」
「いや、そんなつもりは・・・最低限のことは聞きます・・・」
「では今後我を姓で呼んだらならば・・・」
そう言って毛利さ・・・元就さんはこの場を立ち去ろうとした
「待ってください毛利さっ・・・・元就さん!ちゃんと最後まで言ってください!」
結局そのまま元就さんは振り返ることはなかった
えぇええええええええ最終的に教えてくれなかったよあの人!!
それにどこ行くのか聞けなかったし!!
修行見てくれないし!!
でもやらないわけにはいかないし・・・
悲しいけど一人でやるか・・・
自分で思ってすごく悲しくなったよ元就さん・・・・
少しぐらい見てくれたっていいじゃないですか・・・
よし、今度からは逃がさん
そう心に決めた私は、枝を黙々と振り始めた
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