002.最悪のはじまり








「今回は早く済んだな」

「まぁ・・・ナンバー入りでもなかったし・・・聞いたこともない新興マフィアだったし」




今回の仕事は思っていたよりも早く終わらせることが出来た

設立してから間もない新興マフィアだった




この仕事をしていると、こういうマフィアをよく見かける

しかし、一家のボスすらナンバー入りではないのは珍しい




けれども、結果に変わりはない

いきすぎた力に、頼った結果は





「そういえば、この仕事が終わったら本部に連絡を入れて欲しいとカルロが言ってたぞ」

「早く言ってよそういうこと・・・」




どうしてこういう大事な事を先に伝えないのかなこの鴉

・・・しかしどうしよう




このキースカル街に、政府の知り合いはいないはずだ

連絡の取りようがない





「・・・仕方ない。怒られると思うけど一般回線使うしかないか・・・」




怒られることが分かっていての行動とは実に足取りが重くなるものである

だけど急な事だし・・・少しぐらいは見逃してくれるかな





私は近くの電話ボックスに入って番号を押した

数回コールが鳴って、声が聞こえてきた




『もしもし?』

「あーもしもし?カルロ裁判官?私私、




私は本部に一般回線を使ったのは初めてだが、カルロが電話に出るとは思ってもみなかった




か・・・お前・・・連絡を寄越せとは言ったが一般回線使う馬鹿がどこにいる!!」

「し、仕方がないんだって。私の馬鹿鴉が言い忘れてて、伝言言われたのついさっきなんだから・・・見逃してよ」




こ・・・こんなに怒られるとは思ってなかった・・・

電話越しでこんなに怒られたの初めてだよ私




「それで、用件は?・・・また仕事の追加とか?」

『ハァ・・・お前には帰ってからお仕置きが必要なようだな・・・』




「はっ反省はしてるよ、ただ早く用件聞いて電話切りたいだけ!一般回線だから長電話するとまずいでしょ!?」

『まぁ帰って来てからだな。用件はだな、簡潔に言うと早く帰ってこいってことだ』




なんだそんなに私にお仕置きがしたいのかこの鬼畜上司め





「・・・相変わらず性格きついですね、そんなにお仕置きしたいんですか裁判官・・・?」

『それとこれとは別だ。まぁ一理あるけどね』




関係ないことないじゃん

一理あるんじゃん





『近いうちに必ず嵐は起こる。最近出てきた“白いマフィア”の事は知ってるね?』

「白い・・・?あぁ、まだファミリーネームも分かってない組織でしょ?それが関係してんの?」




『ああ、一番動いて欲しくない五大ファミリーのカッチーニ・・・そこにスキャッグス・・・動かない可能性はかなり低いからな』

「・・・・・・カッチーニか・・・・・・」




も知っているだろう?15年前の、鮮血の五日間・・・“カストル・アルテの惨劇”』

「知ってるって言っても名前だけさ。当時私は二歳だもん」




『そうだったな・・・・・・ま、そういうことだ』

「他には?何かある?」




『いや、特にない』

「分かった。じゃあ今から本部に向かうよ。じゃあね」




受話器を戻して電話ボックスから出ると、私は大きなため息をついた

「今から行く」とは言ったけどぶっちゃけ行きたくない




お仕置きって何・・・一般回線使うことがそんな大層な事なの・・・





「元はと言えばアンタが・・・」

「ホラ、さっさと行くぞ」




何コイツ!!

伝えてなかったのに自分は悪くないって!!?




もうやだこの鴉!!!

生意気!!!




「・・・帰ったらモニカに別の鴉用意してもらおっと・・・」

「どこ行ってるんだ?そっちは逆だぞ」




「はぁ・・・」





とりあえず、ボルタ地区に行かなきゃ

確かここから・・・西の方角だっけか




歩きっていうのが辛いよね、途中で心優しい誰か乗せてくれないかな

・・・・ないよね・・・・



そんなことを考えたり、オズと話したりして暫く歩いた

段々、ボルタが見えてきた




「おい、・・・」

「ん?ああ・・・コートね」




私はオズに言われて、腰に巻いていたコートを畳んで荷物の中に押し込んだ

最近、RRがカッチーニの傘下にあるマフィアを潰したと噂が流れている



カッチーニは、報復のために私達RRを追っているそうだ

そして今から行くボルタは、カッチーニの縄張り



RR特有のこの真っ赤なコートと、町で見ない顔の二つが組み合わさった時、

カッチーニがじっとしているとは思えない



だから私はコートを隠したのだ

今、揉め事を起こすわけにはいかない





「しかしまぁ・・・レッドレイヴンの真似事なんてよくやったよね」

「そうだな、お陰でこっちが余計な神経を使う羽目になったしな」




「・・・ま、そうじゃなくても、私達は世間からの嫌われ者よ」






「!」





私は、足を止めて振り返った





「?どうした?」

「・・・・・・いや、なんでもない」




さっきすれ違った、帽子を被った二人組の男

その片方を、どこかで見たような気がした





・・・気のせいか

私の知り合いなんてそうそういないし





再び歩こうと向きを戻した時





「お?カッチーニの旦那じゃないですか」




ビクッ




先程の二人の内、知らない方に馬車の運転手が話しかけていた

何やら話しているみたいだ





「ねぇ、今・・・カッチーニって・・・」

「・・・言ったな」





会話の内容はよく聞き取れないが、恐らくRRについて聞いているのだろう

早く離れた方が良さそうだ




私達はその場から逃げるように去った
















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