バン、という銃声
ボクはそれをかわして、おじさんの方を軽く睨む
視線の先には運転手のおじさんだけでなく、何人か増えていた
「親切な人ほど裏があるって言うけど・・・・・・あんた達何者?」
004.刻まれた数字 アンディside
「言っただろ・・・俺達は崇高な目的を持った・・・・・・」
「スキャグス一家“だった”のさ」
・・・もうまく避けたみたいだ
ボクは目だけを動かしてそれを確認して、再び男達の方を見る
「15年前までこの施設で働いていた」
「!」
「構成員であり、研究員だ」
顔を少し上げて、目の前の古びた建物に目をやる
ドクン、と鼓動が鳴った
掠れてはいるが、読めないことはない
建物に書かれた、『SCCAGGS』の文字
「ここ・・・・・・は」
似てる・・・・・・
あの場所に・・・・・・
―――――――切れないナイフに価値はない・・・人を殺せぬ武器に価値はないのだ
―――――――お前の価値はなんだ?
ドクン
―――――――もう一度言おうか
―――――――負けた方が廃棄処分だ
ズキッと、目が痛い
あの時の記憶が、フラッシュバックする
痛む目を、軽く抑える
「そうだ、スキャッグスの思想は気高いんだ」
「俺達はその意志を継ぎ、新たな武器を作らなきゃいけない」
まだ、そんなことを
どうしてお前達スキャッグスはそうなんだ
「・・・・・・・・・お前ら、レッドレイヴンだろ?」
「この辺にいることは知っていた・・・お前達がこの町に来たタイミングが良すぎたんだ」
「皆どこかで『執行人は大人』だと思い込んでる。だからカッチーニさえも気付かずに見落とすのさ」
「レッドレイヴン・・・・・・実験には申し分ない」
ガシャリ、と相手が武器を構える
ボクは、目を抑えていた手を離す
「存分に、我らスキャッグスの役に立ってもらうぞ!!」
男の声と共に、再び銃声が聞こえた
浅く呼吸をする
「まずは、お前の『力』を見せてみろ!!」
こちらに向かって飛んでくる銃弾を視認して、仕掛け鞄からギロチンを取り出す
そして、歪んだ弧を描いて一振りする
ギロチンと鎖が上手い具合に動いて
銃弾は、全て落ちた
「本当・・・・・・ヤなことばかり思い出させてくれる」
「なに!!?」
一方で、別の大きい音が聞こえた
も、一緒にいた男に反撃しているようだ
の目は、冷めていた
彼女だってレッドレイヴンだ
昔スキャッグスとごちゃごちゃがあったみたいだけど、詳しくはボクも知らない
家族が皆殺しにされた・・・って言ってたような気がする
ボクは―――・・・
「お前達はいつも―――・・・・・・人を『物』としか見ていない」
相も変わらず飛んでくる銃弾を捌きながら、ボクは喋る
「そして自分の狂った思想を正義のように語る」
「知った風な口を利くな。スキャッグスは世界を導く!!」
横目でを見ると、彼女も変わらず冷たい目で反撃を繰り返していた
一言も喋らないまま
それが、敵を威圧しているかのように見えた
「お前に・・・・・・お前にスキャッグスの何が分かる!!」
「『何が分かる』って?」
銃弾を全て弾いて静かに睨む
男の顔は攻撃を全部弾かれて、少し焦っていうような表情だった
「『力』は『力』でしかないってことを、さ」
「お前達は・・・昔から変わっていない・・・」
ここで初めてが口をきいた
やっぱり、家族が殺されたって本当なんだ
「このっ・・・」
男がボクとに向かって乱射した
もう照準も合っていない
ボクとは難なくそれらをかわした
「この目のうずきが教えてくれるんだ」
眼帯の紐が緩み、右目が露わになる
それを見た途端、男の表情がまた一変したのをボクは見逃さない
その一瞬の隙に、先程撃たれた銃弾の一つを捌いた勢いで男の武器を壊した
武器が砕けるのを見ながら、ボクは宣誓した
「だから、ボクは必ずあいつらに辿り着き、この破壊だけの力をあいつらに叩きつけてやるんだ」
ここまで来てようやく、男が状況を把握した顔をした
「・・・そうか・・・!スキャッグスをもはねのけるその『力』・・・お前、リバースナンバーか・・・!!」
リバースナンバー
その言葉は、一生ボクから離れることはなく、一緒に生きて一緒に死ぬ
こんなもの、ボクは・・・
「リバースナンバー・・・ボスが目指した完全体・・・」
ブツブツと男が言い始めたのと同時に、の方からしていた銃声が聞こえなくなったことに気付いた
敵はもうほとんどいない
いない、というよりリバースナンバーと分かってから攻撃してこなくなった
動揺しているのか、怖気づいているのか・・・
まぁ、どっちでもいいけど
“どんな優れた武器でも、使用者の体が耐えられなければ不良品のレッテルが貼られてしまう
そして彼は考えた・・・『武器を人間に合わせる』のではなく
『武器に人間を合わせる』
人のための武器、ではなく、武器のための人・・・それは人間自体を武器とする考え”
「スキャッグスの『ナンバーつき』の中でも特に異質・・・それがリバースナンバー」
「・・・そこまで分かってるならもういいでしょ」
「私達は、お前達に構っている暇なんてな「なぜだ」」
の言葉を遮って、男は疑問の言葉を投げかけた
「続いていたのか?研究は・・・・・・」
この人・・・人の話聞いてない・・・
をチラリと盗み見ると、凄い疲れたような顔をしてた
さっきまでブツブツ言っておいて、また一人でブツブツ言って・・・
退屈しない人だな
「俺達は研究員だぞ?なんで何もっ・・・何も知らされてないんだ・・・!!」
「そんなこと知るわけ「それはお前らが必要ないと見なされたからさ」」
の発言が、また誰かの発言によって遮られる
けど・・・その声、どこかで聞いた声な気が・・・
「え?」
気が付けば男の体は、細かい鎖のような物に巻きつかれようとしていた
場の空気が、一瞬にして凍りついた
「『生きたくば、自分の価値を示せ』。それがスキャッグスだろ?」
そう言うのと同時に、さっきまで目の前でブツブツ喋っていた男の体が裂けた
生々しい嫌な音と、飛び散る鮮血
慣れているとは言え、正直、目の前で見ていい気分にはなれない
その後に次々と男の仲間も殺されていく
そしてそれをやった張本人が、ゆっくりとこちらに向かって来る
帽子を深く被っていて顔はよく見えない
「やぁ、やっと見つけた・・・こんな辺境の町の仕事を受けたかいがあったよ。なぁ・・・アンディ?」
少し風が吹いて、男の顔がチラリと見えた
・・・?ボクを知っている・・・?
けど、ボクの知り合いなんていないに等しい
じゃあ、誰だ・・・・・・?
「忘れたのか?俺の事を」
―――生きたくば、自分の価値を示せ―――
どくん、と鳴った心臓の音が、やけに大きく聞えた
・・・・・・
「あの日のことを」
嫌な汗が頬を伝う
ボクは・・・ボクはこの男を・・・
―…
『・・・あ・・・アン・・・・・・ディ・・・』
『腕は全壊だな。治す必要はない』
『言ったはずだ。それがルール』
『負けた方が、廃棄処分』
…―
「お前・・・・・・生きてたのか・・・・・・?」
ボクはこの男を知っている
「バジル―――・・・!」
「あの時の続きをしようじゃないか。『負けた方が廃棄処分』」
不敵な笑みを浮かべて、バジルは言った
TOP BACK NEXT